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最高裁判所第一小法廷 昭和31年(オ)899号 判決 1957年12月12日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人弁護士古川豊吉、同金子秀男の上告理由第一点の一について。

しかし、原判決は、証拠に基づき適法に、被控訴人(上告人)が昭和二二年一〇月三日の本件売買契約当時控訴人(被上告人)において本件土地を訴外鈴木寿夫に賃貸中のものであり、且つその焼跡には土台や戦災で焼失した同訴外人所有ガレーヂの痕跡のコンクリート及び水道設備なども残存していたことを知つていながらこれを買受けた事実を確定し、しかも、前記認定の事実により訴外人の賃借権は罹災都市借地借家臨時処理法(昭和二一年九月一五日施行)一〇条により該土地の第三取得者に対抗し得ベきものであることを判示しているのである。されば、原判決がそれ以上上告人において右訴外人の賃貸借が右処理法により上告人に対抗し得べきものであることを知つていたことまで審判しなくとも違法であるということはできない。それ故、論旨は採ることを得ない。

同点の二について。

原判決の確定した事実によれば、本件土地は角地にあたり、これを既に上告人の買受けた二ケ所の土地と合わせれば、地形も好都合であつて、上告人が本件土地を買受けることは上告人の利益と認め得る事情にあり且つ本件土地の売買が成立したのは上告人から右二ケ所の土地のほかさらに本件土地をも買入れたい旨申出があつたためであるというのである。かかる事実関係の下においては、本件売買代金額が当時における更地値段相当である一事を以てしては、未だ上告人が前記賃貸借の存在につき善意であつたと認め難いとした原審の判断は相当であつて、所論のような違法は認められない。

同点の三について。

論旨は、結局原判決が適法にした事実認定を非難するに帰し、上告適法の理由と認め難い。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 斉藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 下飯坂潤夫)

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